明けましておめでとうございます。

昨年は、日弁連始め全国各地の弁護士会は戦争法案反対で集会やパレード、講演会などを行いました。私たちの事務所も弁護士会の要請で、憲法学習会への講師派遣や、集会への参加で、反対運動を盛り上げました。しかし、昨年9月19日に自衛隊の海外派兵を認め、集団的自衛権行使を容認する自衛隊法などの関連法案の改正と国際平和協力法などの新法が成立してしまいました。この一連の安保関連法(戦争法)は、ほとんど全ての憲法学者、歴代法制局長官や元最高裁判事、元最高裁長官までも憲法違反と明言しているものです。これは、憲法改正手続を経ずに、憲法違反の政策を強行するもので、立憲主義に反し、クーデタともいうべきものです。今年は、参議院選挙の年です。何はともあれ、憲法違反を平然と行ない、立憲主義を否定した安倍政権に退場してもらい、憲法違反の一昨年の集団的自衛権の行使を容認した閣議決定と昨年成立した戦争法(安保法制)を一旦、廃止して、立憲主義と民主主義を回復しなければなりません。今年こそ、立憲主義を取り戻すために頑張りたいと思います。
私の経験では、多くの人たちは、いろんな人に相談してどうしても問題を解決できず、いよいよ裁判をするしかない、あるいは問題がこじれにこじれて裁判で訴えられたということで弁護士に相談する方がほとんどです。つまり弁護士に相談するのは、裁判が現実的に問題になった場合に相談するものだとほとんどの方が思われているようです。しかしこれは大きな間違いです。ほんの少しでも何か困ったことがあったら弁護士に相談するべきです。こんな些細な問題で弁護士に相談するのは申し訳ないなどと思う必要は全くありません。少し具合が悪かったらお医者さんに行くように、何か困ったら弁護士に相談してみるそういうことが、大切です。お医者さんも、患者さんが散々、自分で我慢して、手の施しようがなくなってから病院に来られても困ります。紛争も、もう少し前に相談に来てくれれば、話し合いで解決できた、裁判にならずに済んだ、破産しないで済んだとか、そう思うことがいっぱいあります。一方、早めに相談して裁判せずに、裁判よりずっと良い条件で解決できたケースが多くあります。何か困ったら、躊躇することなく弁護士に相談してください。
私が、弁護士をやってきてこの世の中で生きていく上で何が大切かいつも考えさせられます。私は、それは真実であると、躊躇なく答えます。真実が最も大切なものです。人をやる気にさせ、一生懸命にさせるのはそれが真実だからです。人は人を裏切りますが、真実は人を裏切らない。真実ほど強いものはありません。冤罪事件で、何十年もかかって、無罪判決や再審無罪を勝ち取ることがあります。その被告人や支援する家族やそのほかの人々を支えるのはそれが真実だからです。ウソは、人を動かしません。なにより、ウソをつく人を動かしません。それどころか、一度ウソをつくと、その代償は極めて大きいものがあります。警察の自白の強要に屈してウソをつくと、これを覆すことは極めて困難で、一生獄につながれることになりかねません。私もことわざは利用しますが、日本において一番嫌いなことわざは「嘘も方便と」いうことわざです。キリスト教の国にくらべ日本人は小さなうそをつくことについて罪の意識を感じないともいわれます。しかし、これは間違いです。小さな嘘ほど、本当のことを言えなくなってしまいます。小さな嘘ほど、ばれたときに、「なんでこんなウソをつくのか。こんな程度のことでもウソをつく人なら、他にどんなウソをついているか分からない」ということになり、信用も人格評価も全く失われます。一つウソをつくと、そのウソをばれないように、次から次へとウソをつかなければならなくなります。どんな賢い人でも、ウソをばれないようにすることは不可能です。裁判の証人尋問では、弁護士は証人に次々とウソをつかせ、その矛盾を突いたり、それがウソであることの証拠を突きつけて真実を明らかにします。真実は、それ自体が、明らかになるような力を持っていると、私は弁護士の仕事を通じて確信しています。なによりも真実を大切にすること、それが私の信条です。

山口県光市の母子殺害事件のような残忍な事件で、どうしてあんな極悪な犯人の弁護をするのか。巷では、こうした弁護士の活動に疑問を抱く方が多くいます。こうした疑問が起きるのは、実は健全な一般の市民は、自分は犯罪に無縁だと考えているからなのです。普通の人は、「自分は絶対に悪いことはしない。悪いことをするのは特別な人間だ」と思っています。しかし、実際には、誰でも、たとえ社会的にはどんなに立派な人でも、犯罪者になってしまう可能性や危険性があるのです。そもそも、人間はすべてが立派な人物ではありません。どんな人間でも欲があり、誘惑に負けてしまう弱い部分を持っています。どんな立派な人物でも何かのきっかけで、とんでもない過ちを犯すことがあるのです。とりわけ仲間がいて集団だと、その場の雰囲気の中で安易に犯罪を起こしてしまうこともあります。図らずも経済的に追い詰められたり、あるいは人間関係に追い詰められた状況で、自分を守るため、家族を守るため不本意で犯罪を起こすこともありえます。何か思わぬ犯罪を起こしたり、巻き込まれた時、そんな時、頼れるのは誰でしょうか。弁護士しかありません。山口県光市の母子殺害事件のような、あんな悪徳非道な人間でも世間の批判に負けず弁護してくれる弁護士なら、自分の犯した事件でも、断ることなく引き受けて頑張ってくれるのではないかとの信頼が生まれます。それが弁護士に対する信頼です。弁護士が、山口県光市の母子殺害事件の犯人の弁護を弁護に値しないとして拒否するなら、いざという時、誰も安心して弁護士に依頼できなくなってしまいます。

新年明けましておめでとうございます。

昨年の暮れは突然の総選挙でバタバタした慌ただしい年でした。弁護士会も昨年は集団的自衛権行使容認の解釈改憲に反対し、秘密保護法の廃止を求める活動に明け暮れました。今年も、いっせい地方選挙もあり、引き続き、日本が戦争できる国か、あくまで平和な国を目指すのか、政治的に大きな転換点に立っている事は間違いないと思います。物価は上がり、景気は益々悪くなっているのに年金は引き下げられ、生活保護費はじめとする公的扶助も引き下げられています。どうしたらいいでしょうのか。国政の根本指針は憲法に書いてあります。それは、国民の願いでもあります。国民の自由と権利が守られ、福祉が充実し、豊かで平和な国の建設。それが、敗戦の廃墟の中から立ち上がった日本国民の願いでもありました。今年は戦後70年の節目の年です。もう一度原点に戻って、頑張りましょう。
 私たち弁護士、事務員一同、以下の事務所綱領の理念を守り今年も依頼者の皆さんとともに頑張りたいと思います。

1 依頼者の基本的人権を守り、社会正義の実現を目指す。

2 日本国憲法を擁護し、その完全な実現を目指す。

3 環境権その他の新しい人権の確立に努める。

 4 常に民衆や社会的弱者の立場に立ち、これらの人々の正当な利益を 守って、闘う。