もうずいぶん前のある夜のことです、私は溜った仕事がやりきれず、事務所で遅くまで仕事をしていました。夜9時か10時を過ぎた頃でしょうか。事務所の電話が鳴りました。電話に出ると、相手は名乗りもせず、突然「自分は今さっき人を殺してしまいました。そんな自分でも相談に乗ってくれますか」と言いました。びっくりしました。しかし、こんなとき弁護士は答えるのに躊躇してはいけないのです。弁護士の答えはこうです。「弁護士の最大の仕事で、最大の義務は依頼者の秘密を守ることです。どんなに優れた弁護士でも、これができなければ失格です。弁護士はあなたを警察に突き出したり、通報はしません。自首を勧めるくらいのことはあるかもしれませんが、安心して相談に来てください。」結局、その人は相談にやってきました。もっとも、その方は殺人者ではありませんでしたが、しかし、他人から見れば、それほどのことではなくとも、本人にとっては、殺人を犯したのと同じくらい深刻なことはあるものです。殺人者の秘密をも守ってくれるなら、自分のことも守ってもくれるに違いないというのが、弁護士に対する信頼なのです。
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