裁判員制度については、弁護士の中には今でも反対論もあり、依頼者の皆さんの中にも選任されたらどうしようと不安を持っている方がおられます。裁判員制度は、以前に日弁連が求めてきた陪審制度とは異なり、問題点も多いと思います。しかし、司法の中に市民の意見や感覚が反映されていく絶好のチャンスであり、最高裁もこの点を強調しています。裏を返すと、これまで市民感覚からかけ離れた裁判がなされてきたことを示すものです。裁判員に選任されたら積極的に参加してください。「人を裁くという大それたことができるのだろうか」という不安を持っている方が大半です。しかし、そのことはとてもいいことです。これまで有罪判決馴れした官僚裁判官のもとで「被告人には騙されないぞ」という感覚で99パーセント超える有罪判決がなされてきました。これに対し、人を裁くことに慣れていないがゆえにその責任を重く感じる市民の裁判員による裁判は、より慎重な裁判になるはずです。慎重な審理を経たうえで、なお人を裁くことに不安を感じるなら、無罪を評決すればいいのです。それが刑事裁判の鉄則である、99人の犯人を逃しても1人の無辜を処罰してはならないという格言で説明される無罪推定の原則なのです。人を裁くことを職業的義務とする裁判官ではなく、人を裁くことに恐れおののいている市民こそ裁判員にふさわしいのです。
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